在宅酸素療法の費用相場はいくら?使用機器の種類や注意点を解説
在宅酸素療法とは、肺機能が低下している方が病院以外で酸素を吸入しながら生活する治療法です。
入院して治療を受ける必要がないため、入院費等の負担は少なくなります。
とはいえ治療には特定の機器が必要になるため「どのくらいのコストがかかるのだろう」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、在宅酸素療法にかかる費用や機器の種類・注意点を紹介します。
目次
在宅酸素療法にかかる費用
在宅酸素療法では、酸素吸入装置のリース代・メンテナンス費が必要です。
月々の費用がいくらになるのか、具体的な金額を見ていきましょう。
リース代やメンテナンス費は医療保険の対象
在宅酸素療法は、医療保険の対象です。
そのため、個人の負担は各人に適用される自己負担額のみとなります。
年齢 | 一般・低所得者 | 一定以上の所得がある人 | 現役並み所得者 |
75歳 | 1割 | 2割 | 3割 |
70歳 | 2割 | ||
70歳未満 | 3割 |
令和4年(2022年)10月1日より後期高齢者の医療負担額が変更されました。
75歳以上の後期高齢者でも、一定以上の所得がある方は医療費が2割負担となります。(※1)
ただし令和7年(2025年)9月30日までは猶予期間が設けられているため、負担額増加の上限は3,000円です。(※2)
※1)厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」
※2) 厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
電気代は別途必要
装置のリース代・メンテナンス費も、全て医療保険の対象です。
装置の設置・使用については保険料の自己負担額以上の出費はありません。
ただし、装置の種類によっては電気を使用しなければなりません。その際発生する電気代は、自己負担となります。
月々どのくらいの電気代がかかるかは、装置の種類や使用量によって異なるため、一概には言えません。
症状や生活スタイルに合った酸素流入量を医師と相談し、同じリットルの装置を比較するのがおすすめです。
リースしたい酸素吸入装置が決まったら、必ずランニングコストを確認しておきましょう。
高額療養費制度や高額介護合算療養費制度
在宅酸素療法を行う際、場合によっては高額療養費制度や高額医療・高額介護合算療養費制度が適用されます。
治療費の一部が還付されるため、より金銭的な負担を抑えることが可能です。
身体障害者手帳を取得すれば公的な福祉制度も利用でき、日常生活の負担が軽くなるでしょう。
詳細な条件等については、居住地の市区町村やケアマネジャー・主治医などに相談してみてください。
在宅酸素療法で使用する装置の種類
在宅酸素療法で使用する酸素吸入装置には「酸素濃縮装置」「液化酸素装置」の2種類があります。
それぞれの違いについて詳しく見ていきましょう。
酸素濃縮装置
空気中に含まれる酸素を濃縮する装置で、空気中の窒素を除去し、酸素濃度を90%以上にまで高めます。
最大で、毎分7Lの酸素を供給可能です。
電気の供給で稼働するため、コードをコンセントにつなげるだけで使えます。
メンテナンスの手間もなく使い勝手は良好ですが、月々の電気代がかかる点はネックかもしれません。
近年は家庭用装置の開発が進み、装置そのものがコンパクトになりました。
高齢者用に作られているものも多く、大きな液晶画面が付いていたり、音声で知らせてくれたりするものも見つかります。
液化酸素装置
液体酸素供給装置に入っている液体酸素を少しずつ気化させて酸素を作る装置です。
電源不要のため電気代がかからず、万が一停電になっても酸素供給が滞る心配がありません。
ただし液体酸素がなくなれば交換の必要があり、外出時は自分で液体酸素を携帯機に移し替える必要があります。
豪雪地域・僻地・離島などでは使用不可のケースもあるため、事前に確認が必要です。
在宅酸素療法の注意点
在宅酸素療法を行う際は、「酸素流量を守る」「酸素ボンベを別途用意する」「火を近づけない」などのポイントを理解して守りましょう。在宅酸素療法での注意点を紹介します。
指示された酸素流量を守る
在宅酸素療法は、あくまでも「不足している酸素を補うため」の治療です。
自己判断で酸素流量を減らしたり増やしたりするのは控えましょう。酸素流量に不安・不満がある場合は、まず主治医に相談してみてださい。
月に1回医師の診察を受ける
正しい在宅酸素療法を受けるため、原則として月に1回は医師の診察を受けなければなりません。
日々の健康状態をメモするなどして、普段の様子を伝えられるようにしておきましょう。
なお月に1回医師の診察を受けることは、保険適用の条件でもあります。
費用の負担を抑えるためにも、診察は必ず受けてください。
酸素ボンベを用意しておく
酸素濃縮装置の場合、停電になると稼働できません。
万が一に備え、酸素ボンベも用意しておくのがおすすめです。
火気厳禁
在宅酸素療法中は、火の取扱いには十分注意してください。
酸素療法中の火災が頻発していることから、厚生労働省は火気の取扱いに関する注意喚起を行っています。
「装置の2m以内に火気を置かないこと」「取扱い説明書どおりに使用すること」などを遵守しましょう。(※3)
※3)厚生労働省「在宅酸素療法における火気の取扱いについて」
在宅酸素療法対応の老人ホームを選ぶポイント
在宅酸素療法中の方が老人ホームに入居する場合は、「看護士が常駐していること」「医療機関と提携していること」などを確認しましょう。
在宅酸素療法対応の老人ホームを選ぶポイントを紹介します。
看護士が常駐していること
在宅酸素療法中でも入居できる老人ホームの中には、「受け入れはするが、酸素の管理は自分で行ってください」とするところがあります。
個人の負担が大きすぎるため、装置の管理まで受け持ってくれるところを選びましょう。
ポイントは、看護士が常駐しているかどうかです。
在宅酸素療法は医療行為に当たるため、介護士では対応できません。看護士が24時間いて、常時対応してくれるところが望ましいと言えます。
医療機関と提携していると安心
医療機関と提携している老人ホームは、医療面で手厚いフォローを受けられます。
在宅酸素療法を行っている以上、どんなときも健康上の不安がなくなることはありません。何かあったときはすぐに対応してくれる老人ホームが安心です。
在宅酸素療法は医療保険が使える
在宅酸素療法は、血中酸素濃度が低下している方に有効な治療方法です。
家庭内に酸素供給装置が必要となりますが、導入・運用費には医療保険が適用されます。
電気代の負担は発生しますが、入院を続けて治療を受けるよりは金銭面の負担は小さくなるはずです。
また近年は、在宅酸素療法に対応する老人ホームも増えています。「看護士が常駐している」「医療機関と連携がある」などをチェックして、落ち着いて過ごせる老人ホームを見つけてください。