介護サービスの重要事項説明書とは?10項目と別添の見るべきポイントを解説
介護施設で介護を受ける際に施設側と取り交わす契約書は専門用語が多く、内容を理解するのが難しいと感じることもあります。そこで、契約内容や施設の状況を把握しやすいように作成されるのが、重要事項説明書です。今回は、介護サービスを受けるときに確認するべき重要事項説明書の各項目と見るべきポイントを解説します。
目次
介護サービスの重要事項説明書とは?
介護施設で介護サービスを受けるために入居契約をする際、必ず内容をチェックしておきたいのが、不動産売買・賃貸契約、保険サービスでも作成されている重要事項説明書です。
契約書は専門用語が多く、内容を把握することは簡単ではありません。理解不足によるトラブルやリスクを防ぐために、契約に関する内容やチェックするべき重要なポイントなどをまとめた書類が、重要事項説明書です。介護サービスを受ける場合の重要事項説明書にはサービスを受ける介護施設の設備や費用、サービス内容や職員の配置体制などがまとめられており、介護施設で作成が義務付けられています。
重要事項説明書は厚生労働省の標準様式で作成されており、いずれの施設でも共通の内容となっています。
介護サービスの重要事項説明書|10項目と別添の見るべきポイント
重要事項説明書はフォーマットが定められているため、どの介護施設でも同じ形式で作成されています。まず記入内容が古くないかどうか、1年以内に記入されているか、記入年月日を確認しましょう。
その上で、介護サービス契約前に見ておくべき10項目とそれぞれのポイントを解説します。
1.事業主体概要
施設を運営する法人の所在地や設立年月日、連絡先などの基本情報が記載されています。運営元の規模や事業内容などをチェックできます。
この項目のチェックポイントは、事業内容です。他の介護施設や病院を経営している法人なら、手厚い医療・介護サポートが期待できる質の高いサービスが受けられる可能性が高いと判断できます。
2.有料老人ホーム事業の概要
この項目では、「住まいの概要」で実際に利用する介護施設の基本情報、「類型」で介護施設の種類が記載されています。介護施設を探している際にチェックした連絡先や管理者情報と相違がないかを確認しましょう。
「有料老人ホーム事業の開始日」で、事業開始からの経過年数がわかります。築年数にこだわる方は「建物の竣工日」をチェックしましょう。
3.建物概要
建物概要には、具体的な介護施設の建物の規模や構造などが詳しく記載されています。居室の広さや個室・相部屋の違い、共用トイレや浴室の数、キッチンの有無なども記載されているので、居住スペースの具体的な情報を知るには要チェックです。
また、安全に住めるかどうかを判断するエレベーターの数や防災設備・緊急通報装置の有無も、この項目でチェックしましょう。
4.サービスの内容
サービスの内容の項目では、運営方針やサービス内容の特色をはじめとして施設内で提供される詳しい介護サービス内容の有無、施設と委託どちらで実施しているのかが確認できます。さらに、医療連携の内容や夜間看護体制、居室を変更する際の費用なども記載されています。
施設内で具体的にどのようなサービスが提供されているかを確認するには、こちらの項目をチェックしておきましょう。
5.職員体制
職員体制とは、施設で働く職員数や職種の内訳、資格取得者の人数などが記載されている項目です。介護職員、機能訓練指導員の職種・経験年数ごとの人数に加えて、夜勤を行う看護・介護職員、前年度1年間の採用者・退職者数の詳しい情報もチェックできます。
どのような資格取得者がどの程度在籍しているかはサービス内容にも関わるため、特に介護福祉士などの専門性の高い資格取得者が在籍しているかがチェックポイントです。
6.利用料金
利用料金の項目には、介護施設の料金プランや料金の支払い方式、月額費用など、介護サービスを利用する際にかかる料金の詳細が記載されています。居住の権利形態や利用料金の算定根拠なども詳しく書かれていますが、必ずチェックしておきたいのが、前払いする入居一時金についてです。
入居一時金が必要な施設では、その算定根拠や償却年月数、返還金の算定方法などが書かれています。入居一時金は高額な金額となる場合が多く、償却終了前に退去または施設が倒産した場合の返金に関しても記載されているので、利用料金の項目はしっかりと確認し、疑問点や不明点がある場合は施設側へ確認しておくべきです。
7.入居者の状況
入居者の状況とは、重要事項説明書が更新された時点での入居者の性別・年齢・要介護度・入居期間別の人数と、平均年齢や入居率などが記載された項目です。現時点で入居している利用者の情報に加えて、平均年齢や退去者の退去理由も書かれています。
入居者の要介護度の割合や退去者の情報をチェックすると、どの程度の要介護度の利用者が多いのか、死亡による退去が多い場合は看取り体制が整っていると確認できます。人気の高さが判断できる入居率、生前解約の状況の退去理由は、施設の状況や対応が確認できるポイントなので、気になる内容があったら施設へ問い合わせてみましょう。
8.苦情・事故等に関する体制
利用者からの苦情対応の窓口と対応時間、定休日が記載されている項目です。事故が起こった際に備えた保険の加入有無や第三者による評価の実施有無など、安心・安全に施設を利用するための体制が確認できます。
万が一入居中の事故やトラブルが発生したときにどのように対応してもらえるのか、契約前にこの項目で確認しましょう。
9.入居希望者への事前の情報開示
入居時に交わす契約書に加えて、施設の経営状況を把握できる財務諸表がどのように公開されるかが記載されている項目です。
情報開示されている項目が多いほど、オープンな運営が行われていることが確認できます。また、入居中の介護施設の倒産や廃業のリスクを知るためにも、財務諸表の開示可否は重要なチェックポイントです。
10.その他
その他の項目には、運営側と入居者が運営やサービスについて話し合う「運営懇親会」の有無や法令上必要な手続きの有無、入居後に要介護度が上がった場合の提携ホームへの移行可否などが書かれています。
将来的に要介護度が上がってより手厚い介護が受けられる施設へ移動したい方、きちんと制度が整っているかどうかが、こちらの項目で確認できます。
別添資料
重要事項説明書の下部には、別添資料として「事業主体が当該都道府県、指定都市、中核市内で実施するほかの介護サービス」、「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅が提供するサービスの一覧表」の2種類があります。これらの資料には契約する介護施設が同じ自治体内で実施している介護サービスと、有料老人ホームまたはサービス付き高齢者向け住宅の場合の提供サービス内容がまとめられているので、目を通しておきましょう。
まとめ
10項目と2種類の資料がある重要事項説明書は、契約内容や施設の詳細を知るための重要な書類です。契約・入居後に想定と違う事態やサービスだったなどのトラブルを回避するためにも、契約前に重要事項説明書のチェックポイントを確認しておくことをおすすめします。